nk2367nkの日記

覚え書きです。

今日のコラム


10月 6日松下幸之助 一日一話(パナソニック

 休日の裏づけ

文化的で繁栄した生活を営むのは、人みなの願いです。わが国でも、最近、休日を増やすということが話題に上がっていますが、休日を単に怠けた姿としてではなく、積極的に生活を楽しむというように考えてきつつあるのは、一つの進んだ姿として、好ましいことだと思います。

しかし、ただ単に休みを多くするというだけで、そこに生産の高まりという裏づけがなかったならば、お互いの収入は減るばかりで、かえって生活の程度は下がってしまうでしょう。原始の時代から、お互いに人間は、生産の高まりとともに生活を高め、しかも休息と慰安の時間を次第に多くしてきたのです。それが社会発展の一つの姿と言えるのです。


筆洗

2013年10月5日筆洗(東京新聞TOKYOWeb)

▼一九六一年の一月二十日、ケネディ大統領は歴史的な就任演説で、ソ連を念頭にこう呼び掛けた。「新たに平和への道を進もうではないか。科学により解き放たれた破壊的な力が意図的にせよ、偶発的にせよ、人類を自滅に追い込む前に」

▼その三日後、米ノースカロライナ州の基地を飛び立ったB52爆撃機が、制御不能に陥った。水爆が落下し、起爆装置が作動した。偶発的事故を防ぐための四つの安全装置のうち三つは作動しなかった

▼最後の一つがかろうじて動き、最悪の事態は免れた。爆発していれば、死の灰でワシントンをはじめ数百万の命が脅かされたはずだ。調査にあたった専門家は、爆発を防いだ装置が簡単にショートしてしまうような脆(もろ)い装置だったことを突き止め、「合衆国と大惨事の間にあったのは、一つの簡素なスイッチだけであった」と指摘した

▼この事故の真相が暴かれたのは、ごく最近だ。米政府は繰り返し、自国の核兵器が国民の生命を脅かすことなどないと説明していた。国家の秘密とは、そういうものなのだろう

▼機密指定が解除された文書から核事故の実態を発掘したジャーナリストのE・シュローサー氏は英紙に語った。「私たちが危険なものを生み出す能力は、それをコントロールする能力を凌駕(りょうが)しているのだ」と

▼汚染水漏れが止まらぬ福島の原発もまた、それを証明している。



2013年10月6日天声人語(OCN*朝日新聞デジタル

天声人語

▼酷暑にうだった日々は遠ざかり、駅までの道にキンモクセイが香りはじめた。味覚に初ものがあれば、匂いにも初ものがある。1年ぶりの芳香を鼻に吸うと、秋が体中に広がって、空気が透明感を増してくる

▼春のジンチョウゲ、秋ならモクセイ。香りの双璧とされるがイメージは違う。前者は潤んだ夜気に溶けるように香る。後者は高い空がよく似合う。「私をお忘れ?」とクチナシに恨まれそうだ。陰ある美人を思わせる梅雨時の名花を、忘れてなんぞおりません

▼モクセイは、花そのものは目立たない。いわば地味な香炉である。〈木犀(もくせい)のかをりほのかにただよふと見まはせど秋の光のみなる〉窪田空穂(くぼたうつぼ)。ふと漂うので周りを見ても、花のありかは分からないことが多い

▼空気の汚れたところでは花をつけにくいそうだ。高度成長でスモッグがひどかった頃は芳香も消えがちだったという。遠くまで香る「九里香(くりこう)」の異名も、澄んだ空気があってのことらしい

▼心配なのは、モクセイの原産地の中国である。大気汚染がおさまらない。先月赴任した本社特派員が、名月の夜によどむ北京の空を嘆いていた。皓々(こうこう)たる月光を〈疑うらくは是(これ)地上の霜かと〉とうたう李白の詩のような情景は、望むべくもないようだ

▼匂いは幼い頃の記憶を呼び覚ますという。モクセイの香りに喚起される、それぞれの秋があろう。筆者の場合は小学校の運動会が浮かぶ。歓声が吸われていく高度成長期の空は、思い出の中ではいつも青く、そして高い。